「単語を知らない」と「点数が伸びない」は同じ問題ではない
単語テストでは書けるのに、長文になると同じ単語の意味を取れない。このズレは珍しくありません。単語を単独で覚えている状態と、文の中で意味を判断できる状態は、別の技能だからです。
そのため、点数が伸びないときにまず単語帳を増やすのは、原因を確認する前の対処になりやすく、遠回りになることがあります。
単語以外でよく見られる原因
実際のレッスンで見られる失点の原因は、単語以外にも複数あります。
- 文法の理解が曖昧で、文の構造ごと意味を取り違えている
- 1文ずつは読めるが、長文全体の流れ(誰が何をしたか)を追えていない
- 読むスピードが遅く、時間内に最後まで読み切れていない
- 音は聞き取れているが、意味に変換するまでに時間がかかる(リスニング)
- 単語の意味は分かるが、自分で文の中で使う段階でつまずく(ライティング)
- 意見や理由を考える段階で止まってしまう(ライティング)
- 設問の形式に慣れておらず、何を聞かれているか正確に読み取れていない
家庭でできる簡単な見分け方
間違えた設問を見直すとき、「単語を知らなかったから」だけで終わらせず、もう少し分けて考えると原因が見えやすくなります。
- 単語自体を知らなかったのか、それとも知っている単語だったのに文の意味が取れなかったのか
- 時間が足りなくて最後まで解けなかったのか、時間があっても分からなかったのか
- 同じタイプの間違いが繰り返されているか、それとも毎回違う原因で間違えているか
同じ間違いが繰り返される場合は、単語よりも文法や読み方のクセが原因になっていることが多く見られます。
語彙そのものが原因のとき
単語以外に原因を探す記事ですが、語彙が本当に原因であるケースも多くあります。次のような場合は、語彙の学習量や方法を優先して見直す価値があります。
- その級の頻出語を実際に知らない(意味を聞かれても出てこない)
- 見覚えはあるが、文の中での意味をあいまいにしか取れない
- 読むときには分かるが、ライティングやスピーキングで自分から思い出して使えない
- 単語一つ一つは分かるのに、文の構造が取れず、意味がつながらない
- 意味は分かるが、一緒に使われる語(言い回し)や使う場面が分からない
最後の二つは、単語を増やすだけでは解決しにくい例です。語彙の問題に見えて、文法や使い方の問題が隠れていないかを確かめてください。
語彙の診断表
| お子さまの様子 | 考えられる課題 | 確かめ方 | 次の練習 |
|---|---|---|---|
| 単語テストでも間違える | 語彙量不足 | 単語の意味を日本語で答えさせる | 頻出語から、例文つきで覚える |
| 見覚えはあるが意味が曖昧 | 意味の定着不足 | 選択肢なしで意味を言えるか | 意味を思い出す練習(単語帳を見ずに) |
| 長文で同じ単語の意味が取れない | 文の中での判断 | 同じ単語を含む文を読ませる | 文の中で意味を推測する練習 |
| 書くときに単語が出てこない | 思い出す力と使う力 | 日本語から英語を言えるか | 例文を使って短い文を作る |
| 単語は分かるが文がつながらない | 文の構造の理解 | 主語と動詞に印を付けられるか | 文法と文型の見直し |
| 意味は分かるが使い方が不自然 | 語の組み合わせ・使う場面 | 例文を自分で作らせる | よく一緒に使う語を例文ごと覚える |
「知っている」にも段階がある
単語を知っている状態には、いくつかの段階があります。見て分かる、文の中で意味が分かる、必要なときに自分で思い出せる、正しい形で使える、という順で考えると、どこで止まっているかを整理しやすくなります。Schmitt(2008年)の総説は、1語ごとに学ぶべき側面が多く、語彙学習は少しずつ進むものだと整理しています。ここで挙げる4つの段階そのものは、研究で確定した階段ではなく、学習を観察するための実用的な目安です。
リーディングやリスニングでは、見て分かることや文の中で意味が分かることが中心になります。一方、ライティングやスピーキングでは、自分から思い出して正しく使う力が求められます。単語帳で意味を答えられても、書く場面で使えないときは、後半の段階が弱い可能性があります。
英国のEducation Endowment Foundationも、中等教育向けリテラシーのガイダンスで、語彙を意図して教えることを勧めています。単語は、一度見るだけでなく、授業や練習の中で繰り返し触れる前提で扱う、という考え方です。
覚え方を変えるなら、根拠のある方法から
原因が単語にある場合でも、日本語訳を何度も眺める方法は、単語テストには強くなっても、文の中で使う力には直結しにくいことがあります。学習研究で比較的よく支持されている方法は、次の4つです。
| 方法 | 具体的には | 根拠 |
|---|---|---|
| 見直すより、思い出す | 単語帳を見返す前に、見ずに意味を言う・書く。思い出せなかった語に印を付ける | Dunlosky らの総説(2013年)は、思い出す練習を効果の高い方法、再読を効果の低い方法に分類している |
| まとめず、間を空ける | 同じ語を、日を変えて何度か思い出す | 同じ総説は間隔を空けた学習も高く評価。Cepeda らの統合研究(2006年)でも、間隔を空けた方が記憶が残りやすい。最適な間隔は、いつまで覚えていたいかで変わる |
| 意味だけでなく、使い方もセットで | 短い例文、一緒に使う語、使う場面まで確認する | Schmitt(2008年)は、1語ごとに学ぶべき側面が多く、語彙学習は少しずつ進むと整理している |
| 触れる量も増やす | 意図して覚える練習に加え、読んだり聞いたりして同じ語に何度も出会う | Schmitt は、意図的な学習と、触れる量を増やす学習の両方が必要としている。Uchihara らのメタ分析(2019年)では、出会う回数と偶発的な語彙学習に中程度の関連(r = .34)があり、小中高生では大学生より関連が小さかった |
これらの研究の多くは大学生など成人を対象にしており、英検の語彙問題での効果を直接調べたものではありません。覚え方を変えたら、1〜2週間後に「文の中で意味が取れる語が増えたか」「書くときに使えたか」を、上の診断表で見直してください。出典は、このページ下部の参考資料にまとめています。
1週間の復習の例
次の流れは、上の「思い出す」「間を空ける」「使い方もセットで」を1週間に当てはめた一例です。最適な日数は研究でも決まっていないため、お子さまの様子に合わせて変えて構いません。
| 日 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1日目 | 新しい語を学び、例文を一つ作る | 意味だけでなく、使う場面を一緒に覚える |
| 2日目 | リストを見ずに、意味を思い出す | 思い出せなかった語に印を付ける |
| 4日目 | 新しい文で使う | 別の主語や場面で短い文を作る |
| 7日目 | 他の語と混ぜて復習する | 忘れた語は1日目に戻る |
あわせて読みたい記事と講師
語彙が書く場面で出てこないときは、英検ライティングで止まる原因と対策が参考になります。過去問の失点を分類したいときは英検の過去問で点数が低かったとき、試験が近いときは英検一次試験の1週間前の過ごし方をご覧ください。覚えた単語が英作文で出てこない場合は、単語帳では覚えたのに英作文で出てこない理由と練習法も関連します。
英検対策に対応できる講師は、Hannah先生、Haruka先生、Nikko先生のプロフィールで確認できます。サポートの全体は英検対策のページをご覧ください。
Petra Tutorsが対策を始める前に確認していること
Petra Tutors(ペトラチューターズ)では、英検対策を始める際、まず単語・文法・読解・リスニング・ライティングのどこで失点しているかを確認したうえで、学習の優先順位を決めます。
単語量を増やすことが必要な場合もありますが、それだけを増やしても伸びにくい場合は、読み方や文法の使い方から見直すことをお勧めしています。
参考資料
- Education Endowment Foundation | Improving Literacy in Secondary Schools
- 日本英語検定協会 | 過去問・試験内容
- Schmitt | Review article: Instructed second language vocabulary learning (Language Teaching Research, 2008)
- Dunlosky et al. | Improving Students' Learning With Effective Learning Techniques (2013)
- Cepeda et al. | Distributed practice in verbal recall tasks (Psychological Bulletin, 2006)
- Uchihara, Webb & Yanagisawa | The Effects of Repetition on Incidental Vocabulary Learning (Language Learning, 2019)



