「知っている」を「使える」に変える4段階
| 段階 | できること | 練習 |
|---|---|---|
| 1 理解 | 見れば意味が分かる | 英語から意味を確認 |
| 2 想起 | ヒントなしで単語を出せる | 日本語や場面から思い出す |
| 3 使用 | 文の中で自然に使える | よく一緒に使う語と一文を作る |
| 4 定着 | 別の日、別の話題でも使える | 時間を空けて再使用 |
「分かる」と「使える」は別の力
Schmittの研究とWebbの研究では、単語を見たり聞いたりして理解できる知識と、自分から単語を取り出して使える知識は分けて考えられています。
たとえば abundant という単語を見て「豊富な」という意味が分かる。これは大切な知識です。でも、英作文で「この地域には自然資源が豊富にある」と書きたいときに abundant が自分から出てくるかは別です。
さらに、abundant resources のような自然な組み合わせで使えるか。文法に合う形で書けるか。自分の考えの中で使えるか。ここまで来て初めて、実際の文章で使いやすくなります。単語を覚えたのに使えないとき、暗記が失敗したとは限りません。
まだ見れば分かる段階にいて、自分から取り出す練習が足りていない場合があります。
単語が使えるようにならない5つの原因
1.英語を見て日本語を答える練習だけになっている
単語帳では abundant → 豊富な のように、英語を見て意味を確認することが多く、これは読解には役立ちます。ただし英作文では、「豊富な」と言いたい場面から abundant を思い出し、文の中に入れる逆向きの動きが必要です。
そこで、単語帳を見直すときも、ときどき日本語や意味だけを見て英単語を言ってみてください。すぐに答えが見つからなくても構いません。
思い出そうとする時間そのものが、単に見直す練習とは違う役割を持ちます。
2.単語を一語だけで覚えている
単語を一語だけで覚えると、文章の中でどう使えばいいか迷いやすくなります。たとえば significant を「重要な」とだけ覚える。それだけでも意味は分かります。
文章では significant difference、significant increase、significant impact のように、よく一緒に使われる語があります。一語だけで覚えるより短い組み合わせで覚えると、文章に入れるときの手がかりが増えます。新しい単語は、意味だけでなく、よく一緒に使う語と自分で使えそうな短い例文まで一緒に残してみてください。
例文は教科書の長い文をそのまま覚える必要はありません。自分が使いそうな短い文の方が、あとで取り出しやすくなります。
3.例文を読むだけで、自分では作っていない
例文を見ると、使い方が分かったと感じます。でも、読むことと作ることは別です。
RiceとTokowiczによる第二言語語彙学習のレビュー研究では、単純な反復だけでなく、思い出す練習や自分で答えを作る活動を組み合わせた研究も整理されています。
たとえば reluctant という単語を覚えたなら、例文を読むだけで終わらせません。
「I was reluctant to...」
まで書いて、自分の経験に続けてみます。
「I was reluctant to join the club at first.」
次の日は別の場面で使います。
「My brother was reluctant to ask for help.」
同じ単語を少し違う文で使うと、単語の意味だけでなく、文の中でどう動くかも確認できます。
4.難しい単語を使うことが目的になっている
英作文で語彙力を見せようとして、覚えたばかりの難しい単語を無理に入れることがあります。難しい語を無理に入れると、意味は近くても文脈に合わなかったり、一緒に使う語が不自然になったり、文法が崩れたりします。
難しい単語を使えたかより、自分の言いたいことに合う単語を正しく使えたかを先に見てください。使える語彙を増やすというのは、難しい単語だけに置き換えることではありません。
自分が伝えたい内容に合わせて、必要な単語を選べるようになることです。
5.一度使って終わっている
新しい単語を一度文で使えたからといって、次の日もすぐ出てくるとは限りません。RiceとTokowiczのレビュー研究でも扱われているように、使える語彙にしたいなら、少し時間を空けながら何度か取り出す練習を入れます。
一度使って終わりにせず、今日一文作り、翌日は単語を見ずにもう一文、数日後は別のテーマでもう一度使う、と時間を空けて取り出します。
単語帳を最初から全部やり直すより、「最近覚えた10語を今週3回使う」のように少数を繰り返す方が、使えるかどうかを確認しやすくなります。
使える単語に変える4ステップ
| 段階 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 見て分かる | まずは意味が分かる状態にする | 発音、品詞、大まかな意味を確認する |
| 2. 見ずに思い出す | 日本語、定義、場面だけを見て英単語を思い出す | 答えを見る前に数秒考える |
| 3. 短い文で使う | 自分で一文作る | 最初は簡単でもよい。難しさより正しく使えることを優先する |
| 4. 別の場面でもう一度使う | 翌日や数日後に、別の話題で同じ単語を使う | 同じ例文を丸暗記せず、単語だけを取り出して新しい文に入れる |
英作文で語彙を増やすなら言い換えから始める
自由英作文でいきなり新しい単語を思い出すのは難しいことがあります。そこで、最初は自分が書いた簡単な文を言い換えてみます。
たとえば「The problem is very important.」と書いたなら、very importantをsignificantなど別の表現に置き換えられるか考えます。ただし、言い換えた後は文脈に合っているか、意味が変わっていないか、一緒に使う語が自然かまで確認します。
この練習をすると、自分がすでに書ける文章と新しい語彙がつながります。
会話で使いたいなら30秒で一文を作る
会話では、辞書を開いてゆっくり考える時間はありません。そのため、会話で使いたい単語は、短時間で取り出す練習が必要です。
練習では単語を一つ決め、30秒以内に自分について一文、次に学校について一文、さらにニュースや一般的な話題でもう一文作ります。完璧な文でなくても、単語を自分から取り出す回数を増やします。
ペトラチューターズで見る3つのポイント
ペトラチューターズで「単語は知っているのに使えない」という相談を見るときは、次の3つを確認します。確認するときは、見れば意味が分かるか、ヒントなしで単語を思い出せるか、自分の文の中で自然に使えるかを見ます。1ができていて2で止まるなら、取り出す練習を増やします。
2はできるけれど3で止まるなら、短い組み合わせや例文で使い方を確認します。どこで止まっているかによって、必要な練習は変わります。
単語帳を増やす前に、今覚えている単語がどの段階にいるのかを見る方が、次の勉強を決めやすくなります。
使える語彙に変える1週間チェック
まとめ 単語を覚えたあとに「取り出す」練習を入れる
単語帳で意味を覚えることは必要です。でも、それだけで英作文や会話に自動的に出てくるとは限りません。最後は、見て意味が分かるだけで終わらず、見ずに思い出し、短い文で使い、別の場面でもう一度使えるかまで確認します。
この順番で、知っている単語を少しずつ使える語彙に変えていきます。このテーマを選んだのは、単語テストではできるのに、文章ではいつも同じ簡単な単語になるという悩みが、暗記量だけでは説明できないからです。
覚えた単語をどの段階で使えなくなっているのか分からない場合は、ペトラチューターズでも英作文や会話を見ながら整理できます。
新しい単語を100個増やす前に、すでに知っている10語を自分の文章で使えるか確認してみてください。
参考資料
- Schmitt, N. (2019). Understanding vocabulary acquisition, instruction, and assessment: A research agenda. Language Teaching.
- Webb, S. (2005). Receptive and Productive Vocabulary Learning: The Effects of Reading and Writing on Word Knowledge. Studies in Second Language Acquisition, 27, 33-52.
- Rice, C. A., & Tokowicz, N. (2020). A Review of Laboratory Studies of Adult Second Language Vocabulary Training. Studies in Second Language Acquisition, 42(2), 439-470.


