「何から始めるか」に、全員共通の正解はない
英語教育の情報を見ると、フォニックスが先だ、会話が先だ、といった主張をよく見かけます。ただ、実際にはお子さまの年齢、興味、今できること、そして目的によって、合う始め方は変わります。
どれか一つが絶対に正しいというより、今のお子さまに合っているかどうかで判断する方が、結果的に続けやすくなります。
始め方を決めるヒントになる観点
- 目的は何か(学校英語のフォローか、将来の英検か、単純に楽しみたいか)
- 今どこまでできるか(文字が読めるか、単語はどれくらい知っているか)
- 何に興味があるか(歌や絵本が好きか、ゲームやアプリが好きか)
- 声に出すことへの抵抗があるかどうか
- 家庭でどれくらいの時間を継続してかけられるか
よくある3つの出発点タイプ
お子さまの状態を大まかに分けると、始め方のヒントが見えやすくなります。
会話は好きだが、文字を読むのが苦手なタイプ
耳から入る英語には抵抗が少ない一方、文字と音のつながりがまだ整理されていない場合があります。この場合、フォニックスなど文字と音を結びつける練習が、読む力を伸ばす助けになることがあります。
文字は読めるが、声に出すことに抵抗があるタイプ
単語や簡単な文は読めても、実際に話すことに慣れていない場合があります。この場合、短い受け答えや音読など、小さな声出しから慣れていく方が、無理なく進められます。
どちらもこれから、というタイプ
英語自体がほぼ初めての場合、身近な単語や簡単な表現から、意味だけでなく音や使い方も一緒に触れていく進め方が、負荷を分けやすくなります。
続けやすさを支える要素
最初から多くの内容を詰め込むと、お子さまも保護者様も疲れてしまいます。分かること、言えること、読めることを少しずつ増やす方が、結果的に長く続けられます。
「今日できたこと」を具体的に確認できると、モチベーションを保ちやすくなります。抽象的な「頑張ろう」よりも、「この単語が言えるようになった」といった具体的な達成の方が、子どもにとって分かりやすい手がかりになります。
短い時間を、間を空けて繰り返す方が定着しやすいことは、学習研究で繰り返し示されています。Dunlosky らの総説(2013年)は、思い出す練習と、間隔を空けた学習を、効果の高い方法として挙げています。Cepeda らの統合研究(2006年)も、復習の間隔を空ける効果を確認しています。ただし、最適な間隔は「いつまで覚えていたいか」で変わり、決まった日数があるわけではありません。研究の多くは大学生などが対象で、小学生に限った結論ではない点も押さえておいてください。週末に2時間より、毎日10〜20分の方が取り入れやすいご家庭が多いでしょう。
いつ始めるのがよいか:早いほど有利、とは限らない
「早く始めた方が有利」という話はよく聞きます。ただ、学校の授業のように英語に触れる時間が限られる環境では、研究の結論はもう少し慎重です。
スペインのバルセロナで行われたBAF(Barcelona Age Factor)プロジェクトでは、8歳、11歳、14歳、18歳以上で英語の学習を始めた生徒を、授業時間が200時間、416時間、726時間に達した時点で比べました。結果として、年長で始めた生徒の方が、初めの段階の進みは速くなっています(Muñoz編、2006年)。研究者は、年少の子どもが持つとされる自然に身につける力が、授業中心で触れる量の少ない環境では十分に働きにくいためだと説明しています。
Nikolov・Mihaljević Djigunović(2011年)の概説も、早期開始が有益と見なされる理由とその条件、そして起こりうる問題点の両方を整理しています。早く始めること自体が結果を決めるのではなく、どんな環境で、どれだけ続けるかが問われます。
ここから言えるのは、始めた年齢そのものより、合計でどれだけ、どんな質で英語に触れ続けられるかが大切だということです。年長から低学年で始めるなら「楽しく続くこと」を、中学年以降で始めるなら「文字や文のしくみを理解しながら進めること」を軸にすると、無理が出にくくなります。これは研究を踏まえた考え方の目安です。
これらの研究は主にヨーロッパの学校を対象にしたもので、日本の家庭学習にそのまま当てはまるとは限りません。また、聞く・話す力と読み書きの力では、結果が異なることがあります。
学校の英語は、学年でこう変わる
家庭や習い事で何を補うかは、学校でどこまで扱われるかによって変わります。現行の学習指導要領と、学校教育法施行規則の授業時数表(別表第一)では、次のように定められています。
| 学年 | 学校での英語 | 家庭・習い事で考えたいこと |
|---|---|---|
| 小学1〜2年 | 国の定める外国語の授業時数はない(学校独自の取り組みによる) | 英語に触れる機会を、楽しく続けられる形で作る |
| 小学3〜4年 | 外国語活動:年35時間。聞く・話すことを中心に、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむ | 文字の読み書きは本格的には扱われないため、文字と音のつながりを家庭で補うか考える |
| 小学5〜6年 | 外国語科(教科):年70時間。聞く・話すに加えて、読む・書く | 宿題やテストへの対応、英検などの目標に合わせて、重点を決める |
各学年の目標は、文部科学省の学習指導要領解説(外国語活動・外国語編)で確認できます。実際の授業の進め方は学校によって違います。
最初の観察チェックリスト
これは正式な診断ではなく、始め方を考えるための観察メモです。お子さまの様子を数日見て、当てはまるものに印を付けてください。
印が少ない領域が、そのまま最初に取り組む順番になるとは限りません。気持ちの面で英語を嫌がっている場合は、内容の前に、安心して取り組める形を探す方が先になることがあります。
5つの学習者像と、最初の優先順位
次の表は、よくある5つのタイプです。実際のお子さまは、複数にまたがることも多くあります。
| タイプ | 最初の優先 | まだ優先しすぎない | 最初の数週間の進歩の目安 |
|---|---|---|---|
| A. 話せるが読めない | 文字と音を結びつける練習 | 長い文章の読解 | 初めて見る単語を、音を出して読もうとする |
| B. 音は読めるが意味が分からない | 語彙と、意味を確認する読み方 | 読む速さ | 読んだ文を、日本語で短く説明できる |
| C. 授業は分かるが、あまり話さない | 短い受け答え、声に出す機会 | 文法の細かい正確さ | 間違えても一言返せる場面が増える |
| D. すぐ学校の課題に対応したい | 今の教材と宿題の理解 | 新しい分野を広げること | 宿題にかかる時間や、迷う箇所が減る |
| E. まったくの初心者 | 身近な単語と表現に、音と意味で触れる | 文字の読み書きを急ぐこと | 英語の時間に、楽しそうに参加できる |
最初の4週間の例
次の流れは、優先順位が変わる様子を示す例であり、決まったカリキュラムではありません。お子さまの様子に合わせて、順番や内容を入れ替えます。
| 週 | 中心にすること | 確認すること |
|---|---|---|
| 1週目 | 現在の英語経験と、嫌がらずにできることの確認 | 楽しく取り組める活動はどれか |
| 2週目 | 選んだ優先領域(例:音と文字、声出し)を、短時間で繰り返す | 同じ活動で、前より楽にできる点はあるか |
| 3週目 | 学んだ語を、新しい場面や文で使う | 習った表現を、自分から使おうとするか |
| 4週目 | 進歩を確認し、優先順位を見直す | 次の月は、同じ領域を続けるか、広げるか |
進め方を変えるタイミング
次のような様子が続くときは、進め方を見直すサインです。
- ほとんど内容を理解できておらず、いつも分からないまま進んでいる
- 内容が簡単すぎて、すぐに飽きてしまう
- ドリルの中ではできても、それ以外の場面で英語を使えない
- 学校で求められることが変わった(学年、テスト、受験など)
- 活動の形が合わず、英語自体を嫌がるようになった
続かないのは、お子さまの努力不足とは限りません。合っていない進め方を続けるより、早めに見直す方が、結果的に負担は小さくなります。
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Petra Tutorsの考え方
Petra Tutors(ペトラチューターズ)では、初めて英語を始めるお子さまに対して、まず今の英語経験と学校での学習内容、そして興味の方向を確認します。
フォニックス、単語、会話、学校英語などから、そのお子さまに合う組み合わせを選び、無理のないペースで進め方をご提案します。
参考資料
- Muñoz (ed.) | Age and the Rate of Foreign Language Learning (Multilingual Matters, 2006)
- Nikolov & Mihaljević Djigunović | All Shades of Every Color: An Overview of Early Teaching and Learning of Foreign Languages (2011)
- 文部科学省 | 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編
- e-Gov法令検索 | 学校教育法施行規則 別表第一
- Dunlosky et al. | Improving Students' Learning With Effective Learning Techniques (2013)
- Cepeda et al. | Distributed practice in verbal recall tasks (2006)



